【レゾンのコラム】2005年10月28日
「環境対策やコンプライアンスなどCSR(企業の社会的責任)の実施にはカネがかかる」
というのが一般的なイメージではないでしょうか?
先日、学校の授業で石油会社BPアモコの環境対策のケースディスカッションをした際にも、
・環境対策と利益にはトレードオフがある
・環境対策をしている企業の製品を消費者がプレミアムを払ってくれればいいが、
実際の消費者は価格に対してシビア
という意見が大半でした。
そのディスカッションの際に先生からサジェスチョンのあったのがInnovation offsetと
いう概念。
Innovation offsetとは、
・環境規制や法令順守を達成するためにコストをかけて技術開発を行うことにより、結
果として費やしたコスト以上のメリット(効率改善・コストダウン)を作り出す。
・つまり競争上マイナスになりそうな制約条件をプラスへと転じる。
というもの。
授業でInnovation offsetについて聞いた時には、私を含めたクラスの反応は「そんなに
うまいこといくんかいな??」という半信半疑のものが多かったように思います。
ところが、そのInnovation offsetの実例をNewsweek日本版10/26号で見つけました。
アメリカにある自然食品スーパー「ホールフーズ・マーケット」のことが出ていました。
ホールフーズ・マーケットの昨年度既存店売上高は14.9%の伸びを示し、92年の上場以来
株価は20倍近くに上昇という優良企業なのですが、ステークホルダーとの関係が上手な
ようです。
<対動物愛護家>
・ホールフーズ・マーケットのジョン・マッキーCEOは、03年の株主総会で動物愛護運動
家であるローレン・オーネラスに「過酷な環境で飼育されたアヒル肉の販売」をした
ことで激しい追及を受ける。
・株主総会での議論は平行線に終わる。
・しかしマッキーは、株主総会後半年をかけて「動物愛護についての本を山ほど読み」
「自身も完全な菜食主義者になった」上で、オーネラスに自社の家畜の飼育環境改善
をお願いし、現在は一緒に働いている。
<対労働者>
・マッキーは労働者に対しても、高賃金を支払いそれをお荷物と考えずに社員のよさを
引き出すことで、労使関係が悪化する流通業界の中で、競争上の強みに転化してきた。
<対買収先>
・買収先との関係も自社のやり方を押し付けるのではなく、時間をかけて自社になじま
せてから、次の買収を行うようにしている。
考えてみるとステークホルダーの望みをかなえるということは、明示化されてない消費
者のニーズを先行してかなえたり、提供する製品やサービスの品質をよくすることにつ
ながる面も多々ありそうです。とすると、ステークホルダーの望みを取り入れて利益と
のトレードオフ解消を図るというのは、競争優位を作る1つのブレークスルーになる可
能性を持つことになります。
ホールフーズがそこまで考えて行動しているとすれば、大人かつしたたかな戦略であ
るように感じました。
投稿者 山口 淳 : 2005年10月28日 13:09