【レゾンのコラム】2006年01月21日
ちょっと気分転換に『光の教会 安藤忠雄の現場』(平松 剛著)を読みました。
再読だったのですが、久しぶりだったせいか、学校の勉強に追われているせいか今までと違う視点で読んでました。
時はバブルの真っ只中。そんな中、教会建て替えの案件が安藤忠雄のもとに持ち込まれた。建設資金も乏しい中、祈るための空間には何が必要でそれはどんな姿をしているべきなのか。また理想の建築を建てたいという夢を思う気持ちと、使いやすさ・乏しい建設資金・土地の形状・構造計算・建設の手間という現実はどのように折り合いをつけ、そして夢はどのように発展していくのか・・・。
この本を読んで新たに感じたことは3つあります。1つめは現実に応じた戦略見直しが戦略の価値を高めること、2つめはビジョンの大切さ、3つめは本質の持つ強さ。
まず①「現実に応じた戦略見直しが戦略の価値を高めること」です。
建築家の設計というのは、ラフなスケッチが出発点である。それをもとに図面や模型に落とし込む作業の中で、長さや角度などを決めていく。またその図面を元に、実際の建設地の地形や地盤に合わせて壁の厚さや材料の決定を行なう中で、建築のコンセプトを生かしつつ現実の設計を見直していく。同じように設計の見直しは施主の希望や実際の施工状況によっても行なわれる。
建築家の着想を建築物としてこの世の生み出すためには、このような地道な設計の見直しの繰り返しが必要です。先日の戦略授業論の授業でもエマージェンシー戦略というのが出てきましたが、戦略なり着想が本当に価値を持つためには、このインプリメンテーションがあるからこそだと感じました。
②「ビジョンの大切さ」です。
この教会の建設では建設側だけでも
a.安藤忠雄 に始まり
b.安藤設計事務所のメンバー
c.安藤忠雄の建築に惚れていて工事を請け負う竜巳建設社長
d.竜巳建設の現場責任者
e.実際に施工現場に入る日雇いの職人さんたち
という人たちがいます。これら全ての人が、安藤忠雄の考える建築のすばらしさや意義 を感じているわけではありません。上から順に建築のすばらしさを感じる気持ちは薄れていくはずです。日雇いの職人さんの多くは仕事をきちんと終わらせ日給をもらうことが大切だと思っている。それには建築家の面倒な設計はむしろ迷惑だ。。。
そういう様々な考えを持つ人たちがいる中で、建設を進めていくのに役立っていたのが完成模型や完成図でした。「この建物が完成するとこんなすてきな姿になるのか」と思うことで多くの人の気持ちを1つにしたり、安藤忠雄に近い人たちを夢の請負人にしていく。これが大きな力を持っていると感じました。
最後は「③本質の持つ強さ」です。
安藤忠雄がこの光の教会を設計するにあたって一番考えているのは「教会とはどういう空間であるべきなのか?」という本質的な問いです。この本質的な問いを考え続けることで、
実際の建築を進める中でも守るべきものが何で変えてよいものは何かの判別ができるようになる。それがないと軸がぶれてしまって、人の心に訴えかける建築にはならない。
企業の戦略でも、それを実施する段階では様々な見直しが必要になります。見直しをしていくうちに軸がぶれて戦略が本来持つ目的を失ったりしてしまうのもよくあること。戦略立案時に本質をしっかり問い続けることが出発点になると考えました。
戦略立案時に問題の本質を見抜くこと、ビジョンの大切さ、戦略の見直しの大切さ。どれも頭ではわかっていてもなかなかリアルな感覚のないものです。この光の教会の建築現場での姿を頭に置きつつ、実際に戦略を動かしてしっかりとした成果を出していきたいなぁと考えました。
投稿者 山口 淳 : 2006年01月21日 20:35